ご挨拶

日本植物病理学会創立100周年を祝して

日本植物病理学会は2015年に創立100周年を迎えることとなりました.

顧みますと,本学会は1916年12月に創設され,発足時,数十名であった会員も,今や,外国会員を含めて約2,000名で組織されており,傘下に9つの研究会および談話会を擁する国内はもとよりアジアでも有数の学会として成長しました.1918年1月に,「日本植物病理学会報」第1巻第1号として刊行された学会誌は,現在では,和文誌年4号,英文誌(Journal of General Plant Pathology: JGPP)年6号を発行し,これまでに80巻(2014年12月現在)を数えるに至っております.

本学会は,25周年,40周年,50周年,60周年,そして80周年と,節目の年ごとにその歴史を祝してきましたが,今回,100周年という記念すべき大きな里程塚を迎えるに至ったことは誠に喜ばしく,一層,感慨深いものがあります.この間,学会の発展を願い,様々な状況下でご尽力を頂いた多くの会員に深い敬意を表したいと存じます.

日本植物病理学会は,植物病理学の進歩と普及を図ることを使命として,これまで隣接科学の発展に伴って,あるいはそれらへの寄与や境界領域への拡がりを展開しつつ,国内の農学関連学会,国際植物病理学会加盟学会,および関係諸機関との連携・協力を図りながら,植物保護,環境科学,およびライフサイエンス研究の一翼を担うべく,基礎から応用に至るまで,幅広い領域で活動を行ってきました.

このたび,100周年を迎えるに当たり,平成21年に100周年記念事業実行委員会が立ち上げられ,様々な記念事業が企画,準備されました.その一部となるJGPPへのレビユー掲載,和文総説および「日本植物病理学100年史」の刊行などについては,すでに完成あるいは完結間近の段階に至っております.また平成26年には,新たに同記念式典等運営委員会を立ち上げ,記念式典や記念シンポジウム開催に向けた準備が鋭意進行中であります.これらに関わってこられた各委員会委員,幹事ならびに執筆者等の皆様には心より感謝を申し上げたいと存じます.

2015年3月28日に開催される100周年記念式典,記念シンポジウム,記念祝賀会には,海外の植物病理学会長および国内農学関連学会長などの出席を仰ぎ,盛大に100周年を悦び合いたいと存じます.そこでは,学会の歴史を振り返るとともに,100周年を節目として,21世紀の大きな課題である食糧確保,食の安全・安心,および環境保全などの重要問題に対して,さらなる研究の深化と技術の発展を見据え,今後,植物病理学会が果たすべき役割を考え,将来における新たな里程を築くため,決意を新たにする機会としたいと考えております.

日本植物病理学会会員には積極的な参加をお願いするとともに,関係分野の皆様方におかれましても,是非,多数のご参集とご協力をお願いいたします.

日本植物病理学会
会長 土屋 健一


日本植物病理学会創立100周年を迎えて

日本植物病理学会創立100周年を謹んでお慶び申し上げます.顧みれば,本学会創立25周年記念大会は,昭和15年4月7日,上野公園の東京科学博物館大講堂で開催されました.その際,故草野俊助博士は会長講演の中で,絶対寄生菌の人工培養,病原菌の宿主特異性や宿主侵入機構,宿主植物の抵抗性,ウイルスなどの研究例を挙げ,基礎研究における未解決の問題に対する姿勢について論じられたとのことです.それから75年,多くの病理学的現象がDNAの言葉で説明できるようになり,分子・細胞レベルで理解できる可能性が見えてきました.同時に,この分野の研究が植物生理学の研究を上回る速度で進展し,植物病理学研究者の多くが植物生理学の分野にも手を伸ばしつつあります.次の100年には,現時点で未解決の問題も,そのおおよそが解明されていることでしょう.

創立100周年を迎えるにあたり,100周年記念事業実行委員会では平成21年より様々な記念事業を企画し準備を始め,すでに一部は成功裏に実施して参りました.例えば,すでに書籍版として刊行されている有用植物病名目録をデジタル化し,平成24年にCDの形で全学会員に無料配布いたしました.また,日本植物病理学会が発行する英文誌Journal of General Plant Pathologyに植物病理学分野の最先端レビューを平成25年より掲載し,間もなく完結の予定です.そして,この英文総説シリーズの日本語版が,日本植物病理学会報特集号 100周年記念総説集として冊子化され,全会員に配布される予定です.さらに,我が国における植物病理学研究の100年の歩みと現状を記録し,後世に残すために,日本植物病理学100年史(100年史)が,日本植物病理学会報の創立100周年記念号として刊行の予定です.本書は,当学会の全会員だけでなく,関連分野の研究者に資料として広く提供することを目的にしております.

さらに,この記念大会の初日には,記念式典・記念シンポジウム・祝賀会が開催されます.我が国の植物病理学研究はその領域が飛躍的に広がり,研究手法や対象病原体に応じて専門分野が細分化されてきたために,全体像について理解し整理することは次第に困難になりつつあります.そのため,各分野の研究の歴史,最先端の研究状況,今後の展望について理解できる資料や機会が提供されることは画期的なことです.この記念事業を機に,100年史によってその歴史を,英文レビュー・和文総説によって最先端の研究状況を,記念シンポジウムによって今後100年の展望を,それぞれ論じる機会として役立てて頂ければ,実行委員会のこれまでの苦労も報われるでしょう.

ぜひとも皆様おそろいで記念式典・シンポジウム・祝賀会に御参集いただき,当学会のこれまでの永い歴史に思いをはせ,未来に向かって再び飛翔する決意を新たにすると共に,翌日からの最新の研究成果に激論を交わしてくださいますようお願い申し上げます.

100周年記念事業実行委員会
委員長 難波 成任

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